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ここにいるよ
いつも キミの傍にいる

だから 抱きしめて眠って 大切に たぐりよせて

これは おとぎ話 なんかじゃない
痛くて 辛くて 苦しくて なき喚くときもあったから

でもいまは ずっと寄り添っているよ

わたしたちの恋は いつも ここにある




わたしもキミも、いつもここにいます。
それは絶対に、何ごとにも変えられない、何かだから。


our love is here to stay


「どこから見ても夕陽はいっしょで、でも少しずつ変わってるけど…
 だけどね、この海はここじゃないと見えないんだ…」

キミが再びこの世界に戻ってきた入り口の、この場所で。
わたしたちはまた出会った。

うん、2年もあったら変わっちゃうんだから。
またキミと一緒にいる時間が無きゃ、キミを感じれない気がして。


オレンジにも似たような大きな太陽が、真っ青なビサイドの海へと顔を隠していなくなり始めた。
それが合図かのように静かに黄色い顔の、優しい光を放つ月が笑いながら現れる。
ビサイドの村の人々も青々とジャングルのように茂る木々たちにもその光を浴びせつつ、その優しい光を浴びたものたちもその光を淡く優しく反射し、月へと光を返した。
そんな、いろいろな輪が無数に存在しているこの世界のどこかしらには想いを持った物々たちもいて、
想いを持ったり、つないだり、だきしめたり、苦しめたり。

嫌な思い出だってあるかもしれない。
やっぱりわくわくするような思い出もあるのかもしれない。


それでも人々はそれがくり返しの命も大切に生きている。
ときには迷いながらも、ときには戸惑いながらも。

それでも、その人はそこで生きている。
人だけではなくて、その人の心も、想いも。
おおきな想うきもちが溢れている、この世界で


「うん、キーリカからも綺麗な海は見えるんだけど…何かがこことは違うんだよね」
ビサイドの、規則正しく聞こえるさざ波の音が風に流れる中に、何かがいつもとは違う、初々しい。そんな彼女の声が通る。
さくり、さくりと浜辺の砂の間に脚をとられながらも、金色で褐色の「彼」が彼女に寄り添った。
「彼」の踏み締めた砂は足跡は全く残さず、小さくサラサラという声を出して泣き、足跡へと流れていく。それでも、何も残っていない砂浜には影が一つ二つ、伸びて動かなくなった。

「そうッスかぁ?俺は…よく覚えてないッス…」
「あ、そういえばあれから一回も…キーリカとかいろんなところに行ってなかった…っけ?」
「……ゴメン」
「ううん、そういう訳じゃなくてー」

キミがいなくなってから2年たって、今になって。
キミがいなかった2年間っていうのは本当に悲しかったけど、進むのは気付くといつの間に進んでた。
周りを見渡せば目眩がするほど、高速でみんなが歩いて行ってしまってるような気がして。
…わたしって乗り遅れてる?
そう想ったのは何度もあるんだ。

「あのね、キミがいない間にすっごくスピラは変わったの」
「ああ…ルールーとワッカが結婚したとか?」
「そういう訳じゃなくて…!」

2年前、思い出したら今とは全然違うね。
少しずつ、海も木々も風も変わってってる…のかなぁ?
2年前はほとんど一緒だったところもあるけど
2年間で進んでく道が枝別れしてくようにたくさんの道が作られてって。

うん、キミの分かるところから話さなきゃ。


「2年前からね、ザナルカンドもキーリカも、うん。ビサイドも。ぜんぶ変わっちゃった。」
「げ~、俺に全部覚えなおせって事ッスか?」

「…かもよ?」
「やっぱ、ユウナ変わったッスねぇ」


やっぱ、わたしも変わっちゃったのかな?
キミは相変わらずその笑顔で明るくて面白くて。
でも、気のせいかな?
わたしはなんとなく2年前からキミが変わったような気がするんだ。
たぶんね、わたしの変わっちゃったから。そう想うんだ。

「だからね、ぜんぶ変わっちゃったからわたしも変わっちゃったの!」
「時間の流れって恐ろしいッス…」

「……なにかな?」
「うっ、何でもないッスよっ!」

やっぱ、キミは変わってないね。


「じゃあ、今度リュックに頼んで、スピラのいろいろな所回る?」
「いっ、いいんッスか?」

うん、キミにいろんな所が変わったところ。見せてあげたいよ。
言葉だけじゃ、伝えられないこともいっぱいあるから、キミの目で直接見てもらいたい、この変わった世界。
キミの目にどう映るかは分からないけど、きっとキミは笑ってちっちゃい子みたいに喜んで見てると想う。


「ううん、やっぱダメ」
「なんで?」

わたしたちはここで会って、うん、またここに来て。
わたしはまだここに居たい。
「もう少し、時間が経ってからね」

キミがいなくて本当に寂しかったんだよ。
キミがいなくなって、やっと自分の気持ちがおとぎ話なんかじゃないって気がついて。
痛くて辛くて苦しくて、なき喚く時もあったんだよ。

とすっ、と彼の胸にユウナは顔を落とすと、ぎゅっと彼の服を握る。
「…おかえりなさい…」
その時間(とき)をゆっくりと、味わうように瞳を閉じた。

「…ただいま」
彼が彼女からの言葉に答えるように言うと、その腕で彼女を抱いた。
さらり、と彼女の茶色の髪が擦れ鳴りながら、青い耳飾りが静かに音を立てた。


暮れなずむ赤とオレンジの空の、ぽっかりと浮いていた雲がいっそうとその色を赤に染めた。
どこからか子供の騒ぐ声が聞こえると、優しく風が流して行く。


うん、まだここから離れたくないよ。
キミの腕の中にいて、目を閉じると静かに聞こえるキミの鼓動がわたしをわたし自身で感じさせてくれる。
わたしがここにいるんだ、って。

ここから動いたらどうなるかなんて知らない。
もしかしたら今よりもいい展開が待ってるのかもしれない、だけど…。

曖昧な幸せよりも、確かな小さな幸せを、キミと感じていたい。
ここにいれば、わたしはキミと小さな幸せを感じていれるって分かってる。

そんなわたしをキミは優しく抱きしめてくれる。
それにわたしもできるだけ返したい。
ここは、そんなキミの心が伝わる場所。


うん。わたしはここから、動いたことなんて無かったんだから。

わたしたちの恋は、いつもここにある。





fin.