「ワッカさん、あの…」 炎を挟み、向かい側に居た金色の髪に水色の瞳の彼が居なくなっていた。 恐る恐る、先程彼と一緒に居たワッカに、ユウナが彼の行方を訊ね、眼を裏で寺院の裏の方へと向けた。 「あぁ、アイツか!アイツならさっきそのー、あっちの寺院の裏の方に行ったぞ」 「え、えぇっ!?」 「そんな驚かれても困るって」 「う、うーん、ありがとうワッカさん」 もうキミはあっちに行っちゃってるんだ。 早いね、私よりも。 でもね、広場の真ん中の火から遠ざかる度に、影ばっかで光がなくなってって、不安だった。 そんな中で、キミの姿が見えたのは本当に嬉しかった。 「やっぱ、何かあるのかな」 ビクリ、と驚いてユウナの方に振り返った彼はティーダ。 「ど、どうしたんッスか?ユウナ…?」 「それはキミこそ!」 ニコリとユウナは笑い、彼の口元へ声を出さないで、と口止めするように人差し指を伸ばす。 「うん。私はちゃんと大丈夫だから…ね、大丈夫だよ。」 「そう……ッスか?」 「もー!私のこと心配してるんっすか?」 ユウナが口を尖らせて言い、しだいにそれは思い出し笑いのような、まるで目の前に何か面白いものがあるかのように笑いはじめ、ティーダに言った。 「助けが必要な場合はね、キミの事呼ぶよ」 指笛を鳴らすように右手を口元に当てる。彼はそれを見て、笑って頷いた。 「ちゃんと、呼んでくれなきゃ困るッスよ?」 「どうしたんですか。わざわざ、こんな暗いところで。」 忍び込むように足音もひとつ立てず、彼らの背へと回り込む。 まるでその事を予測し、その展開を待っていた、というような彼らの表情が、そこにはあった。 「ユウナ様もですぞ。いえ、我々は感謝しているのです」 「2度もスピラを救ってくださった、亡き大召喚士ブラスカ様の愛を受けて育ったそのときのユウナ様を見て、きっとブラスカ様もお喜びですよ」 「いえ、私だけでスピラを救った訳ではありません。他にも、私のガードや仲間が…」 「そう、それですよ!」 「……?」 風が音を立てた。まるで、その空間が歪んで、軋むような音が。 「ユウナ様は今一緒にいる人たちと出会ってから、まるで変わってしまった」 「昔のユウナ様の方を、スピラの人々は愛していた。」 「……どういう…ことですか……?」 後ろへと、引き下がり彼らに問う。考えたくも無いその理由に、聞き耳を閉じようとも、逆にその理由を訊ねた彼女に、彼らは微笑んだ。 「ユウナ様に、あのブリッツボールの選手の少年は必要ないのです」 「さぁ、ユウナ様。昔の様に戻りましょう。きっと、誰もが望んでいるでしょう」 「我々に、あの少年をもう一度、いえ、永遠に消すことなんてた易いことなんですよ」 キミがいない世界を、誰もが望んでいる。 嘘に、決まってるでしょう。 誰もが暗闇を引きずった世界に戻りたくない。 死とは背中合わせの世界に、私はもう似合わない。 「シンのいた時代に戻りたいんですか?…みなさんは」 物語のように、良いことばかりの世界なんてきっとない。 「それとこれとは違いますよ。違う世界の住人なぞ、スピラには必要なんてない」 「彼の所為で、ユウナさまは変わってしまったのですから」 彼の、所為で。 私は変わっちゃいけなかったの? 分かってない、分かってない! 誰も、私のことを分かってくれない。 あの時の苦しみも、あの時の必死だった作り笑顔も、私の彼がどれだけ大切だったのかも。 「あなたたちに、何が分かるっていうんですか。 彼は…彼はこのスピラを2年前に救った大切な人、あなたたちには理解できないの?」 ずっとずっと、彼が私を救ってくれた。 私が、みんなの思い通りの人間になっていかなくても、それで私は幸せなのに。 「あれだけ、呼んでくれないと困るって。言ったのに?」 「だって、どうしようもなかった」 何時の間にか、キミが後ろに立っててくれるのは嬉しいようで、哀しかった。 するすると、ユウナは膝を折って座り込む。 ティーダが彼女の顔を覗き込むと、彼女は彼に抱き付いて、耳元で囁いた。 「もう、どうしようもなかったの」 キミのように、私は生きることなんてできないよ。 自然と、どうしてもみんなに私が創られてく、そんな気がするの。 寺院の壁に寄せた耳へ、壁を伝ってキミの声が聞こえる。 キミの声に近いのは、壁に寄せた耳ではなくて、昔から付けてる青い耳飾りのついた方の耳なのに。 聞いていたくなかった。知らなくてもいい真実を知っちゃうような、そんな感じだったから。 ひんやりと冷えた寺院の壁に、寄せる頬は何故か火照って、不安で不安でしょうがなかった。 聞こえても、理解できない。 ただ、私の身体にキミの声が染み込んでゆく。 失いたくなかった。今の生活も、みんなの笑顔も。 私は別に苦しくてもそれでいいって。 みんなが幸せならそれでいい。私にはそれ以外、何をする価値もないんだって。 目を閉じちゃえば一緒、庇ってもらえなくてもいい 私の勝手だったの…勝手だったんだから… 「分からないのかよ!おまえらさ、ユウナに圧力かけて無理矢理やらせてさ、それで自分の好き勝手やって終わりかよ…!」 私の行けるとこまで行きたいって思ってて、頑張ってたんだけどなぁ 他の人に迷惑かけないようにって、頼まれたようにしようって でも、キミにはそう映るんだね。 「どれだけユウナに苦労かけたのか分かってねーよ!おまえらに向ってユウナは笑ってた。だけど無理矢理笑わせて、その笑った顔っていうのに何か価値なんてあるっていうのか!」 うん…、楽しくなかった。楽しくなかったよ。 笑いたいときだけ笑って、泣きたいときに泣いて だけど、みんなの前で泣いた顔なんて見せるわけにはいかなかったから… 私の宿命、そんな感じだと思ってた。 「ユウナが、そんなに悪いのかよ?お前らさ、自分のことも良く考えてみなって」 キミの言葉を聞いて哀しくなる場面じゃないなんてもう分かってる。 だけど、私のせいだよ、キミにこんなこと言わせちゃって、それをようやく私が気付いたってこと。 「ユウナはさ、ユウナなんだ。今はもう召喚士じゃない」 私は私で、それでいいのかな。変わっちゃった私を、誰かが受け入れてくれるかな。 「ここにいる人っていうのは、全員ユウナはユウナだってこと知ってるから、ユウナも自然に笑ってる。」 変わっちゃった私でも? 「だから、ユウナ自身で自分の進む道を、決めるべきなんだろ?」 私の、行くべき道なんてあったんだね。 どうしようもない不安に押し潰れそうになってたあのとき、 きっとキミが助けてくれた。そう、キミは光。 ねぇ、走り出そう。 カッコ悪い走り方でも、子供みたいに大声上げながらでも、泣きながらでも。 行くべき道っていうところに。 暗い過去がたとえ運命でも忘れて。明るい、何処かへ。 fin. やっぱ、2人って障害あるのかなぁって。 なんとなく、この二人はどうしても近くまで近寄れないっていうイメージがあります。 なにかと二年前にいろいろありすぎたし。 えっと、ここで題名のかいしゃーくっ! 「走る影」の「走る」は、最後の「走り出そう」というところから。 「影」というのは暗い過去、暗い思い出、後悔、とかそういうところから。 つまり、二年前のことからもう逃げ出しても良いときなんだよってところ。 「そう、キミは光」から、目前にもう光がある、という意味を込めて。 意外と意味あったのね……って感じだわっ。。私でも(題名はいつも一番最初に決めてしまうので) 本当に、難産でした…ほんと、完成おめでとーっ! UP '04/07/29 ※聴いた曲(ちょっとした記録として Movin' on without you B&C-Album Version- Give Me A Reason(song by Utada Hikaru) The Power of Smile Remember the kiss(song by KOKIA) |