これはね、ちっちゃい子供たちにあげるの。
ん?そうだね、キミには……


For Children,For You.




「ユウナー、何してるんッスか?」
笑いながら籠の中のお菓子の山に手を入れて、子供と話しているユウナへ、丁度そこに外から入ってきた彼がそう言って話し掛けた。
「見てのとおり。子供たちが自由にセルシウスに入れるようになってるから、その子たちにお菓子配ってまーす。」
ニコっと微笑んで彼に言うと、目の前に来ていた子へとお菓子を渡して、「あげたんだからイタズラしちゃ駄目だよ?」と言って、手を振る。
「はーい」ニコニコと満面の笑みをした男の子はぱたぱたと外へ走って行くと、外からもらっちゃったー、という声が聞こえた。
「…ユウナにはうってつけの仕事ッスね」
「そうっすね」
そして、また子供へとお菓子を渡した。

カボチャを投げられて小さい子供と一緒に走りまわっているリュックや、突然の来客へ腕を組んで睨み付けているパインとは違って好調に小さい子供へとお菓子を渡していくユウナ。
まさにお姉さん、というようなところか。渡した方も、渡された方もにこにこと笑いながら手を振って別れて行く。そして彼女はまた次の子供へと籠から出したお菓子を渡して行くのだ。
「あっ、あれってブリッツのビサイド・オーラカのティーダっていう選手じゃないっ?!」
「そうっぽいっ!」
ユウナと親しげに話していた彼にも注目は注がれて、子供たちが集まって来る。
「よしっ!今なら俺にじゃんけんで勝った一人にサイン入りブリッツボールをくれてやるっ!」
「欲しーっ!ちょーだいっ!」「だめーっ、あたしが貰うのっ」「じゃないっ、俺が貰うんだっ!」
そこらじゅうから口々にそう言う子供たちに、ふふっと微笑む。
「じゃーんけーんぽんっ!はい、パーの人もう一回っ!じゃーんけーん…」
「はい、負けちゃった人でもお菓子あげるから、気落とさないで!」


二人の連携プレイにより、ブリッジが笑い声で絶えなくなった。それから何時間が経っただろうか、みるみるうちに籠の中のお菓子は少なくなってゆく。
時間が経つ度に子供たちの群はなくなって、籠の中のお菓子が全部無くなったと殆ど同時、子供はもう来ない。ふぅ、と彼女が溜息を付いた。
「もう少し経ったら、ベベルでダンスパーティーがあるらしいッスよ」
「ダンス…パーティー?」
「行ってみるだけ行ってみるッスか?ここから近いし、じっとしててもつまらないだろ?」
「だねっ!行ってみるだけ、だけど楽しそう!」
かつての召喚士としての笑顔ではない、彼女の心からであろう笑顔。すっと彼の心に沁みて行くその笑顔が新鮮でたまらなかった。
「魔女パーティーっていうのもあるの?」
「そんなのありえないッス!」
「でもあったら面白そうじゃないっ!」


「トリックオアトリートっ!」
ベベルに入って一分もしない。ばぁんっ、と何か飴のようなものがたくさん落ちるような音。もっと状況を考えれば、投げつけたような音。
ユウナははぁ、と溜息をついてくるりと後ろへ振り返る。
「リュックーっ!何度行ったら分かるの?」
びしっ、と人差し指で一方向を迷いも無しに指差すと、その指を伝った先にいるのは彼女が名前を言ったリュック。
「だってー、暇なんだもんっ!」
「ギップルさんに相手してもらうんじゃなかったの?」
「なんでギップルなのさーっ!」
「あれ?ギップルってリュックの彼氏じゃなかったんスか?」
「か、勝手にそんなこと決め付けないでよっ!な・何があっても違うのーっ!」
力ずくで握った右手をふるふると揺らしながら下を向くリュックの顔には彼女の長い金色の髪の毛がかかって見えないものの、そんな従姉妹の表情をユウナは知っている。
くすり、と笑って「うそうそっ、でも飴投げちゃ駄目なのっ!」とリュックに言い聞かせる。
「もーっ!パインに相手してもらうもんっ」
「あ、パインは駄目だと思うんスけど…」
チラリと瞳を眼の端に寄せる。彼の視線の先には黒の割合の強い銀髪の女性。
「えー、なんでなんで?」
「何だったっけ?バラライってやつと一緒にいたと思った」と、ティーダは先程見た結果を報告。
「あーっ、そっかぁパインも抜け駆けってわけぇ?もー、あたしはどうすればいいってのっ!」
「リュックだっていつもギップルさんとあったときらぶらぶしてるじゃない」
やれやれ、と両手を広げて、彼もはぁと溜息をついて彼女の方に手を乗せる。
「そっ、そんなことしてないもん!」
むすー、と頬を膨らませて踵を返すと、そのまま早足で歩き出す。ユウナはその先にいる人と目を合わせてお辞儀をするとにこりと微笑んだ。金髪の前髪を立て、片目のアルベドの瞳の彼は先程のリュックとの会話に幾度となく出てきた人。

「ユウナは大変だな、でもあんなにいろんな人に構ってなくてもいいんじゃないッスか?」
「んー、違うの。だって、私まで元気になるの。リュックと話したり、パインと話したり、いろんな人と話したりするとね。」
ふふ、と微笑みを見せると、あーあと床にばら撒かれた飴を拾う。
「最近みんなと話すことってめっきり減っちゃったけど、面白いんだ」
「でさ、この飴ってどうする?」
「んー、ちっちゃい子にプレゼントしたいんだけどー、あっあそこに仮装したこどもさんがっ!」
ぱたぱたと小走りで子供の方へ駆け出すと殆ど同時。
「でさー」
「え?」
彼女が後ろへ振り返ると、頭をぽりぽりと掻きながらユウナに訊ねる。
「俺へのプレゼントは?」



バラバラバラ、と音を立てて手に持った飴が下へと落ちる。
一瞬で顔色を変えて、両の手で顔を抱え込む。
か、考えてなかったーっ!!


「じゃ、この飴一つ貰うよ」
右の人差し指と中指で飴の一包みを取っていくと、彼女がしゅっと手で取り返す。
「キミへのプレゼントじゃないの。これはこどもたちへのプレゼントなの」

一瞬、雲で明るい月が隠されて暗くなった瞬間のこと。
ちゅ、と彼の唇へと少しだけ押し当てた口付け。月がまた出たときには
「ほらっ、お菓子渡さないと」
そう言って向こう側へ人差し指を差す彼女が居た。


キミへのプレゼントは一緒にいることと、ちょっとしたキスと…
この気持ち。
ちゃんとおごってあげたんだから、悪戯は止して。
まだまだ楽しまなきゃ。




fin.





なんか、私のかくティユウはもうティユウじゃなくてギプリュのプラスアルファと化してると今日気付きました(遅)
ユウナがちょっとダイタンー、な感じにしたつもりも虚しく散り去りました…
やっぱ小さいお子様たちには優しなユウナ。それと同じくティーダ。
だって二人ともヒーローだしね。二人ともヒロインだしね(!?)




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