だってだって、何かしなきゃ始らない! Alright! 夕暮れ時。橙色の陽が地に顔を沈めた。 徐々に伸び行き濃くなる影はやがて、回りの真っ黒の闇へと埋もれた。 そんな暗闇の中、威勢良く走り回る少女が一人。少し前から子供たちはいなくなってきたというのに、彼女が通るとそれ以上の煩さが耳を突く。 ベベルの一夜は、その一夜だけ明りが輝いていた。 まだそう遅い時間ではない。けれど、子供たちは夕暮れからはしゃぎ騒ぎまくりくたくたに疲れ果てていた。もう、子供たちの姿は殆ど見えない。 もともと、ベベルにそう子供の姿などは見うけられないのだが。 「何度行ったら分かるの?」 ユウナの後ろについていると、彼女はユウナに怒鳴られ、肩を竦めた。「だって暇なんだもん!」そう彼女は答えていた。 そう、彼女は今大の暇人なのである。 「ギップルー、暇なのっ!」 「だからー、なんで俺はいっつもお前の暇つぶし人間にならなくちゃいけないんだ?」 「だって暇なときにギップルが傍にいるんだもん」 「へいへい」「へーいっ!」 ぽんっ、と彼の背中を叩くと、彼ははぁと特大の溜息を吐いては彼女を見た。 「昔っからホント変わってねぇなぁ…」 「っていうかさ、いちおうこのパーティーの主催者の一人なんだけど、俺」 「でも暇そうじゃん」 ブーブー、と口を尖らせて文句を言うと、ギップルがまたもや溜息を漏らした。 「だってさぁ、ユウナんもパインもなんか違うトコ行っちゃうしさ、でもあたしには二人みたいに行くトコなんて無いしさぁ」 「そこで俺のトコに来たってって言ってくれてたらすっげー嬉しかった。」 「ちょ、ちょっとっ、変な誤解しないでよねっ!あたしはただ暇で、他に暇そうな人がギップルしか居なかったから来ただけなんだからねっ!」 しゅっと一瞬で顔を一気に赤色に染めて、彼に怒鳴りつける。そんな彼は彼女を見て見ぬフリか、 「へいへーい」 と言って話を逸らかす。がしがしと頭を掻いてちらりとまた彼女を見つめる。 「絶対絶対ぜーぇったいっ!絶対違うんだからねっ!」 「はいはい、分かったって」 口の隅を上げて微笑む彼を見ても、彼女はむすっと膨れたまま。上目遣いで今にも泣きそうな子供っぽい可愛い仕種で彼の同じ翠色の瞳を見つめたまま。 「もういいのーっ!」 ふんっ、と彼に背を向けて大股で歩く。 たまには背を向けて、違う方向を歩いてみてもいいかも。 でも、きっとあたしは来た方向へ戻っちゃう。 けれど2・3歩。歩いて振り返って一歩戻って。 「もう分かったってば」 「おいおい、変わりやすいのにも程があるぞ?」 その手であたしをどこかへ連れてって いっつも、チイは面白い何処かへ連れて行ってくれるから。 「どっか、抜け出しちゃわない?だってヌージもバラライもベベルのここにはいるんでしょ?」 同じ場所を眺めてたってつまんない。違う場所とか、違う空見てたいの。 けどね、どの場所を見たって、隣にいる人が変わっちゃうだけで幸せか幸せじゃないか変わっちゃう。 もう遅い!暇で暇で仕方ないんだから! ぎゅっと彼の右手を握って力いっぱいに引く。 「ほら、行こうよ!街の電灯とか、ホントきれいだよ!」 いくつあるか数え切れない明りの数も、人の人数も、ほら、今チイの隣で見てるから。 あたしとチイの仲じゃないっ! 「逃げ切ってやるかっ!」 怒った顔もホントウは好き。でも、やっぱ笑ってる顔がイチバン好きなんだよ。 二人、抜け出して街へと出て行く。先ほどとは逆で、彼が手を引いて。 街の真ん中に置かれた特大のカボチャの中の、これまた大きな明りの傍では影一つない。 当たりに転がっているのはぼこぼこと穴の空いた、顔に成りそこないのカボチャやカブ達。 「もったいないなぁ。うまくできないから捨てちゃうなんて」 彼女が一つオレンジ色のカボチャを手に取ると、酷くぼこぼこと穴が空いていた。泥も少し付いていたが、やろうと思えば取り返しがつく。 「俺が続き作ってやるよ」 「んー、じゃああたしはこっちの顔作るよ!」 2人はどこからかナイフを出してカボチャの顔をナイフで掘って行く。アルベド族というのは誰もがいつでもナイフを持っていて、それなりに上手に使えるらしい。 次第に出来上がっていく顔を、にやにやと見つめながら、どんな顔が出来上がるのかを期待している2人を大きなカボチャ電灯が灯していた。 幸せな人、この指とまれ! 好きにこれに刻んでけばいい。自由にやってけばいい。 だんだんできてくるでしょ?自分の心の中の顔。 あたしの心の顔は、今にこにこって笑ってる。ほら、このカボチャも笑ってる! きらめく太陽もなくていいから、輝く星もなくていいから、 少しの明りとチイの傍にいるだけで、こんなにも素敵なことができちゃうんだ。 だって、何かしなきゃ始らない! どれくらいの時間がすぎただろうか、二人でできたカボチャの顔を、大きなカボチャ電灯の上に並べて置いた。 下から受けるカボチャ電灯の光が2つのカボチャを照らし出している様子が少し不気味だったが、そんなことも思わない程、可愛らしい顔。 少し歪で歪んだ形の眼に口。 きっとね、ちょっとこんなガタガタしてるのはあたしたちに似ちゃったからだよ。 まるであたしたちの子供…―っていう喩えは良くないけどっ!まぁそんなようなカンジ。 あたしたちの心を映し出した鏡なの。 「寒っ」 「そんな寒ぃかっこしてるからだろ?さ、ベベルに帰るぞ。」 ふっと右手を彼女に差し出して背を向ける。きっとそんな彼の顔は…真っ赤な色。 「リュック」 短く彼が呟くように言った彼女の名前は、彼女の中でじぃんと反響した。 握りかえして、右手で彼に抱き付く。 「な、なんだよっ」 「もうー、ギップル大好きっ!」 何処かへ吹いてく冷たい風に乗って、あたしたちは進んでる。 でも、きっとそれは暖かくて、優しくて、冷たくなんて無い。 明日にも未来にも続いてる長くて大きな風。 足取りだって軽いの。早く先に進んじゃう。 跡なんて向いてる暇もないし、後悔したってしょうがない。 ん、昔やっちゃって、反省してることとか、悪いなぁって想ってることとか 人のこと、傷付けちゃったりとか でもね、そんなことがいっぱいあって、だからあたしにはこう、いっぱいの楽しみも 幸せだってある。…あたしは幸せなんでしょう? だって、あたしたちの顔は生き生きしてるでしょ? みんなは、幸せ? fin. 落ち着けリュック第2弾(はて、1弾はどこ?) 私、言われたのですがもう少し落ち着いてって先日。 もしかしたらハイテンションなときの性格はリュック並みなのかも。 怒ったときの口調はパインらしいよ、管理人の性格。 |