今宵、貴方の元へと迎い参り、
一緒に踊って頂けますか?
Trick or Treat.


Prologue




いつからあれらの組織が公認したのか、今やスピラ中で大騒ぎのお祭り。
ハロウィーン。子供たちが仮装をして家々を回り、一つの合い言葉を家の大人へと向けるのだ。
「トリック・オア・トリート」
子供たちにはなんと魔法の言葉か、キャンディやチョコレート、クッキーにパイ。そんなお菓子が次々と手に入ってしまう不思議な言葉。
どこからか伝わってきたその風習にもう一つ、何時の間にやらか付け加えられたもう一つの風習。
盛大なダンスパーティーを。
大好きな人とひとときを。

歪んだオレンジ色のカボチャや、カブからできた提灯が幾つも道に転がっていた。
虫に食われたものや、ボコボコと穴の空いたもの、少し割れていたり、不揃いのカボチャやカブの提灯。
顔の形にくり貫いて、光を灯したらそのお祭りは幕を開ける。
「トリックオア、トリートぉ!」


「もう少し自分の立場に立って考えてみなって」
先程、見た事も無い程の満面の笑みでガタガタとセルシウスのブリッジに入ってきたリュックへ冷たく言い放つ。
ユウナはただそれを気の毒、とまるで思っているような顔をしながら、苦笑いしていた。
「少しくらいいいじゃんっ。ねぇー、とりっくおあとりーとぉー」
「私たちは逆の立場なんだって。そう頼まれてたでしょ?もう少し経ったらセルシウスにちっちゃい子たちが来るんだよ」
「えー、あたしだってまだ子供なんだからっ!ねっ?もう、ホント、ちょっとだけっ!」
「駄目!」
「パイン、そんなに言わなくても…」

珍しく、朝からずっと地面に着陸しているセルシウスに、ブリッジにたくさん置かれた籠の中の、いっぱいのお菓子。
キャンディ、チョコレートにクッキー、エトセトラ。数え切れないほどのお菓子たち。
もちろんこれらはカモメ団の面々で食べるのではなく、近くから来た子供たちに配るもの。
少し前からある連合の団体、というか組織から配られて、無償だが手伝って欲しいと毎年のように頼まれる。
かつて青年同盟、新エボン党、マキナ派と呼ばれた組織に。
「自分たちで自分の首をシメてるって訳さ、あいつらは」とパインが言っていた。
企画しているのが大人たち、ということに笑ってしまう。


「ビサイドとかの人たちも本土に集まってるの?」
ユウナが回りを見渡すと、ビサイドの島で見た事がある人たちまでもいる。キーリカで見た事がある人も、ビーカネルで見た事がある人も。
「ハロウィンだからってここに集まってきてるんだってさ」
「はいはーい!自由時間希望ー!!」
「だから、リュックはそれだけしか考えてないんだからーっ!」


今宵も、楽しいひとときを送りましょう。
愛する人のために。
もちろん、本気ではなくてほら、
ちょっとした「いたずら」で…




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