時間だけ通り過ぎて行くんだ 残るのは堪えた泪と出せなかった言葉 思い出せないのはあの言葉とあのときの想い。 この景色の中に思い出すのは… 掌涙透 「ちょ、なにするんだよ…っ!」 「聞きたいんだろ?」 ニヤリといつもと違う微笑みで彼女に微笑みかけた彼が引っ張る彼女の手に力がじわじわと沁み出す。 ぎゅっと握られた指先が引かれて連れて行かれたのはもう部屋の外。長く続く新エボン党本部の長い長い廊下。 驚いた表情をした僧たちが、見っとも無くドタバタと走りながら何処かへと行く彼らの議長らを見た。 優しさは幻想のように 言葉は泡沫のように いつまでもこの胸にしまっておきたい ずっと大切にしていたいと思うのに どうして知らぬ間に消えてゆくの 愛しさは嘘のように 哀しみは繋鎖のように いつまでもそう胸にしまわれてしまうの ずっとそうしていきたいと思ってない どうして知らぬ間にそうなっていくの 走る間に何度足首を捻ったことか、ギリギリと痛みを増して行くその痛みに耐えながらその手を離すことは出来ずに彼に連れられた場所は屋根も無く、吹き抜けた、本部の屋上。 ようやく手を振り払って彼から身を離すと、ゆっくりと振り返る彼の陰影が濃く目に残る。 再び冷たい風が彼女の白い頬に刺さると、背景に高く伸びた真っ赤になる葉の木々で、浮き、目につく彼の濃緑の服。背けることさえできない強い彼の視線を受けながら戸惑ったように後ろへと下がる。 「聞きたいんでしょう?」 調べのように流れ良く繋がれて行く彼の声に耳を傾けながら、もう一度見やったのは はらはらと風に乗って赤い葉が彼らの元へと吹かれヒラリと舞い、蝶の様に降り立った。 その息に込められた意味も知らず その息吹に込められた意味も知らず 「どれだけの人にそう言って、どれだけの人にそう笑って来たのか」 今と同じ紅い葉が舞う中に 「…あんたには知る由も無いだろ、」 ただ一人バラライだけが 「そう……確かに君は言っていた」 その景色の中に埋め込まれていたような気がした。 そう寂しく笑って言う彼に似合わないまるで引き攣ったような笑顔が静かにまた蓋を閉じた。 「嘘は言ってない。それだけ信じてくれればいい」 真実か幻想か、僕には分からない けど、君の心のなかにそれを閉じ込めているのは必要なのか必要ではないのか 僕には想像が付かないんだ。 君の、言いたいと願った言葉なのか ふとした運命の悪戯が促した言葉の一欠けらか それすらも「運命」 「さて、僕らもそろそろ潮時かな、パイン?」 何も気にも留めないその表情に変えられた彼の顔。告げられたのは 2人が望んでいるはずもない言葉。 「私は覚えてる。あのときあんたは…」 僕は君を愛している 「……って言ってただろ…?ただ…ただ私はそれだけ……」 それだけしか覚えてない。間違いなんて無いから 嘘だと言って… 怯えたような瞳で彼を力も無く睨み付けて戸惑ったような口調で怒鳴り付けるように叫ぶ。 「今の私を信じてくれ…、どれだけの人にそう言っても、どれだけの人にそう笑っても」 帰ってこない思い出 犯した過ちさえ訂正の出来ないほど過ぎてしまった時間と強く言ってしまった言葉。 帰らない、「とき」も 立ち止まってよ 振り向いてみてよ お互いの視線の先には ほら ふたりがいる 「ずっと私に残るのはその笑った顔だけで…」 変えられない思い出 前には戻れない、今にももう居れない。 今も見るこの景色の中にその笑った顔をくれるだけで、私はいつもどれくらいの物をもらっているのだろう。 その「とき」以上の価値と理由をくれる。 「もう一度言うから…、私は好きで信じてる、あんたの事を」 もう何処へ行ったって誰に言ったって捻じ曲げることもできない真実を誰かが否定する権利なんてない。 自分も否定したくない、あんたの言ったことなら、尚更。 「違うんなら違うって言えって。嘘なら嘘って言えよ…!それなら私はただ騙されただけで済むから…」 騙されるよりも、両方とも哀しむ方が嫌だろ? 「今」の瞬間に戻れないなら後悔するなんて絶対嫌だ。 「なぁ…!」 コツリ、コツリとヒールの音を響かせながら徐に彼に近寄って行くと、両手で彼の胸元を掴んで問い質す。 「間違ってるかもしれない」 すっと彼が呟いた言葉にビクリと震えると、右手で目から数粒落ちた泪を彼の右手で掬われた。 「僕が、ね」 「君は、後悔しない?僕と一緒にいること」 「…うん」 「そう…良かった。もう僕の事が嫌なのかと思ったよ、あのとき…そう、昨日だね。」 ん?と何かを考え込むように顔を歪ませる。 「…?……!?」 「よっぽど疲れすぎたんだよ、君が。気疲れしてたのかもしれないけど」 「私…、殆ど丸一日寝てたっていうのか…?!」 よく考えてみればおかしかった。ほんの数時間であまりにも樹の葉の色が変わりすぎていた。緑、黄から、紅へ。 忘れないで 君はいつの時もひとりじゃない 「パイン…?」 「ん」 彼女の背を抱いて、その場に座り込むと軽く抱き寄せて頬を摺り寄せる。 「戻ってきて」 ぎゅっと腕を背に廻して、その手に力を込めてまた泪が落ちた。 「……ただいま」 信じてる いつも傍にいることを 私の場所はただ此処しかない。 彼女の頬を包み込む様に両手を這わせて唇を寄せる、 躊躇って、もう一度彼女の顔から距離を置く。 さっきの瞬間から驚いた顔でピクリとも動かない彼女の頬に軽く口付けを送って言うのは 「やっぱり、その顔が一番可愛い」 今度は躊躇わずに、頬を赤らめた彼女へと口付ける。 ずっと君は手放さないよ、 僕の……今度言うことにしようかな 君にはまた、馬鹿、そう言い返されるだけかもしれないけど、ただそれが「君」だからね。 もう探さない 次の言葉も、後悔だって私には要らない 大切なのは今何処にいるかだけ。今、私はここにいてあんたがここにいるのか。ただ、それだけ。 孤独を感じても いつかは煌く紅葉のもとで ふたりは出会うから 動かないのはその笑顔だけでいい 繋いだ手だってもう離さないでいい もし、いつか離すことになってしまっても それはそれで私なりのハッピーエンドになることは分かってる。 前を見て歩く きっと僕と君は花結び けど、きっとそれはちょっとした運命の中のその少しだけ。 いつか… 固く結んで見せる、 解けない程に、ずっと離れないように。 今日は本当に少し固く結んで上げただけ。 予想もしない、私とあなたのいつかの話。 fin. "Itsuka..." written by Kajika "ShoRuiToh" written by Jura Thanks for your luv,&Thanks for your access! UP '04/12/07 |