雨がやんで、雲に隠れてた日が出て来て日が差した瞬間、 あたしはそれが好きなんだ。 葉にきらり 「きゃぁぁっ!」 ゴロゴロゴロ…、空に一筋光が走り、空全体がそう唸った。 スピラ全域は大豪雨。彼女たちの乗っているセルシウスは幸い、雲の上を飛んでいる為雨の影響は受けない。 雷の音がかなりの近距離でリアルに聞こえる点をのぞいては。 「このままじゃ、きっと下に降りれないよね」 ユウナがセルシウスの窓の外を覗き、雲で覆われ見えないスピラへと目を向ける。 雲の小さな隙間からスピラは見えるものの、セルシウスの速さがあまりにも速く、殆どと言っていい程にスピラは見えなかった。 「降りる途中で雷にやられるんじゃないか?」 「ちょ、ちょっとー!怖いコト言わないでよっ」 「あれー?リュックは雷克服したんじゃなかったっけ?」 「そ、そうだけどさぁー…」 リュックが口ごもると、ユウナがニヤニヤと笑いながらパインと一瞬目を合わせた。するとパインも何かを企むように笑った。 「じゃあじゃあー、カレシと一緒に話せば問題ないねー」 「は、はぁっ?!」 「大丈夫だって、雨の日は危なくてマキナいじってないよ」 「な、なにさぁっ!?」 ぐいぐいと通信スフィアの方へ引っ張るユウナと、ブリッジ全員にいる人全員に訳を話してブリッジから退散させるパインという、2人のすさまじいチームワークでブリッジには3人だけとなり、静かなブリッジ全体に雨が機体に当たる音だけが響いた。 もちろん、隣の部屋からは「リュックー!」と叫ぶカモメ団のリーダーの声が虚しく響いていた。 「さてと、じゃあ勝手に繋げば?」 「ど、何処に?」 「もちろんあそこでしょう?私たち2人ともそう思ってたんだけど、別にリュックの勝手で良いんじゃない?」 「なんか…あたし半分おどされてない?」 うー、と気に入らないように呻きながらリュックが頭を掻くと、ユウナは逆にニコニコと笑いながら通信スフィアのボタンを手際良く押して行く。 「じゃあ、喜楽にどうぞー」 「間違ってもギップルにムカついたからって言って液晶殴るなよ」 ちょ、ちょっとーっ!と外へ出て行く2人を追っかけようとすると、丁度その時、通信スフィアの液晶にはジョゼ寺院の様子が映し出された。 『おー、どうした?シドのむす…』 「だからぁーっ、あたしの名前はリュックだってばっ!」 『あ、悪ぃ悪ぃ』 「わ、悪そうな顔してないじゃん、いっつもさー、ギップルは」 画面の先に顔を覗かせたギップルへ、びしっと指差すと、ほぉーと何か考え付いたかのように頷く。 「ん?何かあったの?」 『いや、何もっ!』 「ひどーいっ!」 『だから何なんだっ!』 ほんっと、ほんっと昔はあたしたちさ、何にもヒミツなコトなんて無かったっていうのに、なんで今はこうなっちゃうんだろうね。 ギップルのコトも、ついでにあたしのコトも、あたしは全然分からないんだ。 今何が言いたいのかとか、何したいとか、ギップルが言わないかわりにあたしも言えない。 「んー、何にも」『……』 だって変わっちゃったんだもん。 『あー、雨の日はヤル気起きねぇっ!』 「ギップルってそんなに雨って嫌いだったっけ?」 ホームにいるときは雨降ってても砂漠で遊んでたっていうのに。 『なんか…、ジメジメするんだよなぁ…」 「あっ、そ……」 あたしは、そんなこともないよ。 「でもさー。そんなに嫌うことないじゃん」 雨が上がったときにたまに出る虹見るの、そういうのとか好きなんだけど… でもね、上がったときの日が差し込む瞬間っていうのが本当に好きなんだよね。 なんか、眠ってた何かが目覚めたみたいに、羽を伸ばしたカモメみたいに。 「雨が上がったトコ想像すればいいじゃん!」 『ふぅ。おまえのその前向きさが欲しいよ』 「前向きに生きなきゃ、アルベドの名がすたるよ?ギップルもしっかりしないとー!」 ただ、雨雲が通り過ぎるのを待ってるお日様も、 夜に光るお月様も通り過ぎるのを待ってる。 あたしは、ずっとそれを待ってるお日様とか。お月様とかの方が前向きだと思うよ。 「よぉしっ!んじゃっ、雨が上がったらチイの所に気合い入れに行くよーっ!」 『ああっ!?』 「んじゃー、お代は?」 『また言いたいんだろ?「自分の名前呼んで」くれって』 うっ…図星。 全部、どうしてギップルはあたしのこと分かっちゃうわけ? それもこれも、嬉しいっちゃ嬉しいんだけどね。 『よっ…、リュック』 視線を外して彼お得意のぽりぽりと頭を掻きながら、言ったのはそんな一言。 「よし、おっけっ。」 全部変わっちゃったって思うときはホント、沢山ある。 名前呼んでくれないときとか、んー、いろいろ沢山っ! でもね、お日様が差し込む瞬間も、お月様がみんなを照らす瞬間も、きっとみんなは喜んでる。 みんなみんな、1日1日違うって言うけど、こんなに細かいことはあんまり変わったりなんてしてないんだよ。 あたしの周りにいる人たちみんなが、あたしに優しくしてくれて、 それであたしはずっと楽しいっていうのも、毎日変わらない。 あたしが、ギップルのことが好きだってことも。 「今もこれからも、ずっと変わらないんだよ」 ずっと変わらないことに、後悔することなんて、絶対誰にもあるわけがないから、 あたしがギップルを好きだってこと、ずっと変わらないって信じてる。 雨がたくさん降っても、じりじりと地面に日が当たって暑くなったとしても、 それは後悔するんじゃなくて「もう一歩進もう」 そうやって、前向きに見させてくれるんだ。 あたしは、こんな世界もみんなも大好き。 ありがとね、ユウナも、パインも。 ね。水の雫が下に落ちて 葉が、キラリ。 fin. 彼女の前向きさと、自然の前向きさを合わせてみました。 自然って、本当にすごいんだよね。 UP '04/08/18 |