いつもより着飾って、オシャレして
大したことなんてできないのに、一生懸命頑張っちゃう。


髪飾り




「ジョゼだけはお断りだー!」
「やっぱ、まだ子供だし」
そう騒ぎながら、仮にもセルシウス操縦士・カモメ団リーダーの役目をこなしていると思われる彼は、リュックの兄。
リュックと同じくアルベド族で、とにかく騒ぎまくる。でもリュックの数倍も、彼は見ているのも聞いているのも騒がしいのだが。

「煩いっ、煩いっ、煩いのっ!」
「なんだー、リュック!その態度はっ!」
「そのとか、そーいうのは別にアニキにはカンケーないでしょっ!」
遂には兄妹2人で騒ぎまくる。ドッタン・バッタン、ときたまあの巨大なセルシウスが横に揺れる。
「そういうことは別の場所でやってくれないか?」
「そ、そうだよ二人ともっ!まだ朝…なんだし……」

始まりは今日の早朝。リュックの「ジョゼに行きたい」という一言により、この一連の騒ぎが始った訳である。
彼女の勝手にさせておけばいいものを、またアニキがひたすら「行きたくない」と駄々をこねる。
ユウナとパインはまだ眠っているときに、発生したその事件。


「もー、ユウナんたちには分かんないのぉっ!あたしたち兄妹じゃないと分かんないのっ!」
「絶対っ、ジョゼには行かせんっ!」
ひたすらと、二人はアルベド語で喧嘩を始める。
丁度そのときに、ブリッジに一人、入室。

「いい加減、シメられたいのか」
包丁片手に、目の下にくっきりとクマを残した銀髪の剣士の一言と片手の包丁を見て兄妹たちは先程の煩さは何処へやら、と思わせる程に静まったという。



「まぁね、とりあえずはリュックをジョゼに連れてって、って……大丈夫?アニキさーん?」
まるで魂が抜けたかのようにその場にぼっと座って、苦笑いしている彼が、口元をニヤつかせて上の空で笑っている。明らかに、目は笑ってはいなかったのだが。
「ああ…大丈夫だ…、たぶん……」
「でもさー、なんでパインが包丁持ってるワケ?」
「今日は私が朝食当番、って言ったろ」
つい先日、いつも居住区でカモメ団の朝食を作っていたマスター(&ダーリン)が何処へいくかは分からないが「里帰り〜する〜よ〜?」と言ってこのセルシウスを降りた。
と、いう訳で朝食は毎日当番制でやることになったのである。今日は、包丁片手のパインが当番の日。

「いい加減、大人しくするんだな」
「分かったってー、パインせんせー」
「あ、アニキさんもリュックが行きたいって行ってるんだから、聞いてあげようね」
「分かった、ユウナ……」
これにて、一件落着。

「じゃ、アニキー、そゆことでジョゼへ出発だよー!」
「うー……」
アニキが操縦桿を握り、セルシウスはたぶん無事にジョゼへと出発した。



さて、と。準備準備。
髪の毛といて、三つ編みしてお化粧して、
でもさ、どうしてかな、これだけじゃまだ足んない気がする。
「さーてリュックちゃんは何してるのー?」
「げっ……」
リュックの自室へと小さく響いたドアを開ける音は彼女を気づかせずに開いた。
そして彼女の部屋へと入ったのは、見覚えのある茶色の髪の大召喚士。もちろん、それはユウナ。

「リュックもついにそんなオトシゴロなのねー…」
「んー、違うと思うけど…」
ユウナの言ったことを何気なく反対。そうリュックに返されたユウナは「あははー…」と笑っていた。
「朝ご飯いるのか?リュックは」
そう言いながら次はリュックの部屋へパインが入室する。
「あ、んじゃー食べてこっかなっ。セルシウスで食べるのが一番落ち着くし」
分かった、とヒラヒラ手を振って、パインはそのままリュックの部屋から出て行った。
しーん、と突然リュックの部屋内が静まり返る。

「と、いうことはリュックはジョゼから昼まで帰ってこない、って事ね」
「も、もーっ!」

「もうっ、ユウナんはそんなに気にしなくてもいいからーっ!」
リュックが出てって、と言うように手をユウナへと向ける。クスクスとユウナは笑って、頷いた。
「分かったって、リュック。今出てくよ。」
ユウナが少しも表情を曇らせずに出て行こうとすると、リュックはごめんね、というように手を振った。


ねぇ、どうしたら。アイツはなんか言ってくれるのかな。
いっつもいっつもさぁっ!何も言わないでそのまま居なくなっちゃう。

ドレッサーの前にある椅子へと腰掛け、頬杖を付いて開かれた鏡を覗く。
いつも髪の毛に付いている赤や青の丸い髪飾りが数え切れないほど入った開きっぱなしのポーチから一粒、その髪飾りを指で摘んで、見つめた。
ただ、彼女を曲げてその表面に映し出す球は、表情を何も変えない。
「あたしってさ、アイツの何なんだろうね、最近思うんだけど」

ユウナんとかさ、パインみたいにスキナヒトっていうのにあんまり歓迎されないでしょー、
それにそんなに頻繁に会わないし、会っても何にもやんないしさぁ。
結局はタダの幼なじみ……なんだよね、やっぱ。

摘んでいた髪飾りを、元あったポーチへと投げる。しかし、それはポーチの中の髪飾りにぶつかって床へと転がり落ちて行く。
それでも、拾おうとはしない。結局拾ったって殆ど数は変わらないし、無くしたって殆ど支障はない。

どうしても自分を可愛く見せようとか、そう思っちゃうよ。
いつもと違う風にしてみて、アイツにもっと見て欲しいとか。
「あーっ、もうっ。ホントにホントにっ、こんなんじゃないってばっ!」
先程したばかりの化粧をすぐに落として、整えた髪もグシャグシャに掻き乱す。
「どうしたらいいのっ……」

あと数分でジョゼに着くというのに、まっさらの状態へと逆戻り。
お化粧ポーチからアイシャドウを出して、瞼にのせる。
いつもよりオレンジの強いリップに、チークを薄く塗って、マスカラを付けて。

どうしてだろ、何か…ものたんない。
ドレッサーの隅の缶に入れて立てたくしを出して、長い髪の毛を、毛先へと解いて流す。
もう何度も解いてしまって、一回も絡まりはしない長い金色の髪の毛。

「んー……っ!」
いかにも機嫌が悪そうに、口をへの字に曲げて、鏡に映った自分を見つめる。ぷぅ、と膨らませた頬に、ぐっしゃぐしゃになった髪型。

イメチェーンっ!って言ってもきっと何にもなんないと思うし、ねぇ?

髪の生え際の方から、毛先へと髪を指で摘んで手を流し、その一束を三つ編みに結ぶ。
いつも通りに赤い丸い、髪飾りを通す。繰り返して、繰り返して。
ある程度に、髪の毛が整ったころに。

左手で頬杖をついて、右手で先程のポーチから、幾らかの髪飾りを握り出す。
力を抜くたびに、一つずつ零れ落ちて行く色鮮やかな髪飾りが音を鳴らす。
急ぎも何も見せない整った、ぶつかり合う音色。

そして、中の髪飾りに跳ね返って、また床へと落ちた。


ねぇ、どうしたら、
そんなに真っ直ぐに跳んでけるのさ。

一気にヘアスタイルを完成させる。驚くべき、ハイスピードで。
握った髪飾りも手当たり次第に髪の毛へと絡ませたり、通したりさせる。
少々、いつもよりも無茶苦茶な場所に飾りはついていたのだが。

いっつも不安になっちゃう。
上手に自分を飾るってことなんて、あたしにはできないし、したってあたしじゃないし。
でも、やっぱ飾りたくなっちゃうよ。

オシャレだって、いっぱいして。
いつもよりも変えたメイクもして、髪型も少し変えて、
ちょっとだけ、服の着方変えてみたりとかさぁ。
もっともっと、可愛くなりたいって。




ぎゅっと、再び髪飾りを手いっぱいに握って、寄せる。

ウソのあたしだってことは、もう分かってることだけどさ。




fin.





ギプリュなのに、ギップル出てなくてごめんなさい…
なんとなく、「オトメゴコロ」っていうのを書いてみたくなって(もてあそぶな)
だからちょっとしたデート前の緊張感っていうか、そういう設定。
(話中には書いてませんが、きっと二人でなんか約束してたという設定も心の片隅に…)
好きな子と会う前はどうしても可愛く見せたいとか想う気持ち(私は無いけどね…)
まぁ、可愛いわっていう、そんな可愛い恋心を書いてみたかったので。


UP '04/08/08