大好きだってこと、言ってしまったら 全部の事が済んだとは限らない。 She is the apple of my eye. 彼女はとても大切で、心から欲しいもの。 そんな意味を込めて。 まるでいつもより数倍時が進むのが遅いかのようなひととき。 艶やかな睫毛をそっと、蝶のようにひらめかせ、再び紅い瞳を見せた。 そんな美しくも、どこかにまだ年相応の子供らしさを残した綺麗な深い紅い瞳により、また視線を彼女へと返す。 感じ取ってしまう、彼女の視線。 「なんで、お前はそんなに一パターンしか無いんだ…」 「酷いな。僕がまるで何も考えて無いような言い方して」 さらりとバラライが言い流し、金色の瞳で彼女を見つめた。 少なからずも、彼女がそのことに対して厭味を持つ程の時間を。 「だって、あんたが何にも考えてないからだろ。あんたは気付いてないかも知れないけどさ」 冷たい目つきでの彼女の視線がグサグサと彼に刺さり、バラライは困ったな、というように苦笑いする。 「結局は、君も僕の何処が一パターンなのかが言えない。そうなんだろう、パイン?」 「さぁ。やってみてからじゃないと分からないぞ」 彼女の宣戦布告らしきその言葉は、哀しく虚しく聞こえたような気がする。 「じゃあ、いつもと趣向を変えた方が好み。そういう訳で言いたいのかな、君は」 おいで、そう誘い導くように左手を彼女へ差し出すと、彼女は歪めた顔で、右手をその左手に乗せる。 力無しに、優しく彼女の指を弄る。動かそうとは全くしていないその指を、彼の無茶苦茶なお遊びで擽る。 パインの肩の力が抜かれて行くのは、二人とも分かっていた。 心を許した訳でも無い、ただいつまで続くかの分からないこの事に、防御を薄くしていただけ。 その手を、引いて押し戻す。よろり、と彼女の脚は上手い具合に攀じれ、バランスを崩して室内のソファへと腰掛けられた。 「そうじゃ、ない。」 「言うのがもう遅すぎるよ。」 これでも、止めたいとでも思ってる? 勢いは無く、そのまま躊躇いもしずに彼女の唇へと、唇を触れさせる。 彼女はそれに何も抵抗を見せないで、バラライの頬へと右手を添えた。 親指で、彼の目尻を撫でると、彼はその指の方へと瞳を寄せて、くすっと微笑んだ。 すっとその手のままで彼の顔を押し離す。力は全く無く、ただ押しているだけのその手に彼の抵抗は全く存在しない。 そのまま、彼女の手の動きだけに合わせて、身体を引いた。 「僕は、君を愛してる」 いくらなんでも。急すぎるよ。 できるのは一パターンだけ、そんなのじゃなかった。 「いきなりそんな事言わないで。私だって…全部理解なんてできない……んだ。」 ふっ、と何処かへと眼を向けて、彼を視界外へと追い払う。ようやく心残りながらも彼を見ることのない世界へと視界が行くと、また彼の声が寂しく耳に通った。 「僕は好きなんだ」 言われて哀しいことじゃない。むしろ嬉しいことなのに。 見ちゃいけない、見ちゃいけない、そう言い続けないと。もう今みたいに平静を装えない。 間違いなく、私もあんたが好きだ。 「もっと側に居たいし、もっと近付きたい。いつもそう思ってる」 パインの瞼へと指を滑らせて、なぞる。弱々しく落とされた瞼が恐れているのか、何かから逃げようとしているのか、小刻みに震えて瞬きをする。 「パインは、どう思う?」 堪えないと。喉が熱くなって、今ももう目頭がかなり熱い。 誰にも素になった表情を見せる訳にはいかない。 誤解させるかもしれない、私がこのままで行くと。 そうすればあんたも傷付くと思うから、私はこのままで居たい。 いつものあんたと、何が違うんだ… 「僕はもう…」 「もうっ、何も言わないでっ…!」 「私も、あんたの事は嫌いじゃない…」 「そう…、よかった…。」 眉間に皺を寄せて、今にも子供のように泣き出しそうな顔で彼を見つめると、言った。 「手、出して」 「ん?」 「だからっ、手!」 ふと出した彼の手に、彼女の手が勢いよく飛びついて、自らの方へと引き寄せる。いきなりの事で、彼がソファの隣へと座り込む。 「お願いだから、黙って。何も…言うな……」 「…いいよ」 きっとあんたは気付いてる。 私がなんであんたに喋らさせたくないかとか、いろいろ。 いっつも、全部私の事を見透かしてるあんたは、こんな時にも見透かしてくれる。 静かに彼の方へと頭を乗せる。決して彼には自分の表情が見えないその位置。 「ごめん…その、…だから……」 「いいよ。君が見ていいっていうまで、僕は君の顔見ないから」 「…なんで」 「僕には、今の君の表情なんて分からないよ」 「…嘘ばっかり」 本当は痛いほど、君の表情が伝わって来る。 安定しない、不規則な吐息と、熱っぽい息に火照った頬。 重なった身体から伝わる、速い君の鼓動。 きっと、僕は君の今の表情を言い当てることは容易にできる。 だけど、君にその事を言ったら。何も意味がなくなってしまうからね。 「わざわざ、いつもと変わってごめんね」 「いいんだ、別に……私の所為だ」 私は、あんたの事勝手に、全部知ってるって思ってた。 次にどんなこというだとか、どういう風にするとか、そういうのも。 でも、絶対そんなことできてないよ。私。 すぐに受け入れられないって事だから。 こんな大切なことすぐに受け入れなきゃいけないって、知ってることだけどさ。 私は躊躇った。あんたの言った「愛してる」って言葉に。 本当の気持ちを出す事が出来たんだったら、私はその言葉に頷けれた。けど、できなかった。 その私を見て、あんたは疑ったりはしなかったのか? 感情も欲情も、何も無い私だった。そんな結末を控えていたと思わなかったの…か? 頷くことも何をすることもできない私に、あんたへの気持ちなんて何も無い。 思わなかった? きっと、こんな表情見せたらあんたを傷付けるだけ。 私の思い込みと勝手な出来ないことだけを理由にあんたを心配させることなんてできない。 だから。今日は秘密で泣いてやる。 fin. セレブスピラ投稿バラパイ作品第2団。 テーマは「暗涙」(人知れず涙を流す事) 言葉の意味すら知らないですし、考えてみたら 「人知れずってどういう意味だっけ?」とか まずは日本人性を疑った作品。 ふふーん、今と文章の趣味が違うのね、とか思ってみたり 絶対「あんたを心配させることなんてできない」じゃなくて、 今書いてたら「あんたを心配させることはできない」にしたかった! (一見何にも変わらないけど、 なんとなく今は「は」の方が好き。 っていうか、本当読んでて恥ずかしい…! site UP '04/11/03 |