何もかも思い通りにいかないって、そう思ってた。 まるで閉じ込められて成長することを妨げられている花のような私に、 光と自由をくれたのはキミだった。 その笑顔、忘れない。 Piece Of Love 「見て!なんか変わった形だねっ」 一面はまるで海の中。形様々、色とりどりな魚や、海草、海に棲む数え切れないほどの種類の生物が一望できる。 ルカに新しくできたアクアリウムだった。 「えーっと、ビーカネル地方でしか見られない貴重な魚、らしいッスよ」 「そうなんっすか。こう、いっつも海の中っていうのは見てきたつもりなのに、こんな魚がいるなんて思いもしなかったよ」 その時、太陽に似せた照明の光を遮って、彼らの足元に何か影が這っていった。 「え、何っ!?」 「これはビサイド周辺に多く生息している魚、らしいッス!」 「こ、こんなのがビサイドのすぐ近くにいたなんて…」 す、と彼の開くガイドブックを覗き込んだ。 「全然、知らなかった……こんな、近くにずっと居たはずなのにね」 また、照明の光が切り取られた。 アクアリウム内のレストランで、向かい合って昼食を摂る。周囲の水槽ではまた多くの様々な魚が泳いでいたが、今魚を食べていると思うと少し生々しい。 「ホント、最初は魚が集められてるだけって聞いてつまらないのかなあなんて思ってたけど…実際は思った以上にすごい魚がたくさん居てびっくりしたなぁ。……キミはどう思う?」 「え、いや俺は少し前に来たばっかりで…」 「えっ、そうだったの?じゃあ無理矢理連れてってもらっちゃって悪かったかな?」 「そんなことないッスよ。俺はユウナと来られただけで満足ッス」 「あ…ありがとう」 かちゃかちゃと周りで客のフォークとナイフがぶつかり鳴る音が聞こえる。時々起つ楽しそうな笑い声を聞きながら、手元のキャンドルの灯火を眺めていた。 「そうそう!そういえばリュックが昨日ビサイドに通信してきたの、仕事が大変だ、って」 「へぇ。そういえばリュックも結構すごい役職だったっけ?」 「うん。名前長すぎて覚えてないんだけど…でね、なんか野暮用とか言ってたけど……」 「あ、そういえばジョゼで子供預かってるんだよなっ?リュックって」 「あ、うんそう。それで顔にひっかき傷をたくさん作っててね…」 「確かギップルも、そんなこと言ってたな。なんでも子供だけじゃなくてサルにもひっかかれてるって…」 「うん。あのサルはドレスフィアのなんだけどね」 「リュックも大変になったんだな」 「そう、だね」 私が言うことなんて、もうとっくに君は知ってることばっかだね。 「そういえばキミ、今日って仕事…あっ」 「ティーダ!なんであなたこんなところでのんびりしてるのよ!」 話しては静寂、の繰り返し。そして彼女がまた新しい話題を持ち込もうとしたとき、そう声が聞こえて長い茶髪の綺麗な女性がティーダに駆け寄った。 「え、だって今日は試合は夜からだろ?」 「でも他のメンバーは全員集まってミーティングしてるのよ?なのにあなただけ…」 「はぁ!?あのメンバーでちゃんと試合が進んでるんッスか?!」 「いちおうあんなメンバーでもそれぞれのチームのメンバーなの。ブリッツに関してはものすごく熱心なのよ」 「じゃ、じゃあ今から急いで行くから!ちょっと待って!」 「はいはい。遅れたらスタメンから外すわよ」 「あー行く行くっ!」 そんな会話をただ座ってユウナは聞いていた。 「あれ、今日ってビサイド・オーラカの試合じゃないの?」 「え、言わなかったっけ?スピラ全体を五つの地域に分けて、そのチームでリーグ戦って…」 「う、ううん、何も聞いてないよ?」 「だって巷じゃその話で持ちきりだったしさ…なんか何を知らないのか分からなくて」 「そうなんだ…」 「じゃ、ごめん!ちゃんと金は払っておくから、俺はミーティングに行ってくるよ。今日は最後まで付き合えなくてごめんな」 「うん。分かった…」 ただ、その内容を受け入れるしかなかった。 「ごめん遅れて!もう行けるッス」 「はいはい。もう始まってから10分は経ってますけどね」 「マジッスか!?」 それから微笑んで茶髪の女性はティーダの肩に手を置いて、微笑みかけた。 まるで、恋人同士みたいだね… マネージャー、なのかな。あの人。 マネージャーさんがあんな綺麗な女の人だったってことも知らなかったし、 キミは私が昨日知ったばかりの話もずっと前から知っていたような口ぶりだし、 今日の試合が大きいことも何も言ってくれなかった。 私、何も知らなかった。 本当、全然知らなかった。 こんな、近くにずっと居たはずなのにね。 |